フリーランスが加入する社会保険とは
会社を辞めてフリーランスになると、社会保険の加入先が変わります。会社員時代は「健康保険」と「厚生年金」に加入していましたが、フリーランスでは「国民健康保険」と「国民年金」が基本となります。
この変化は単なる名称の違いではありません。保険料の負担額、将来もらえる年金額、受けられる保障内容など、多くの点で違いがあります。まずは全体像を理解しましょう。
会社の健康保険組合または協会けんぽ
国民年金に上乗せされる手厚い年金
会社が約半分を負担してくれる
家族を無料で扶養に入れられる
市区町村が運営する健康保険
基礎年金のみ(上乗せは自分で準備)
全額自己負担だが減免制度もある
家族も個別に加入が必要
健康保険の選択肢を理解しよう
フリーランスになったとき、健康保険には実は3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分の状況に合わせて選ぶことが大切です。
多くの人が国民健康保険を選びますが、家族構成や前職の収入、独立後の収入見込みによっては、他の選択肢の方が有利になることもあります。
どの選択肢が最もお得かは、個人の状況によって大きく変わります。市区町村の役所や前職の健康保険組合に問い合わせて、具体的な金額を試算してもらうことをおすすめします。また、退職後14日以内に手続きが必要なので、退職前から準備しておきましょう。
国民年金の仕組みと将来の受給額
次は年金について見ていきましょう。フリーランスが加入する国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎年金です。会社員が加入する厚生年金とは異なり、国民年金は収入に関わらず保険料が一律で決まっています。
2024年度の国民年金保険料は月額16,980円です(※日本年金機構の公式データより)。この金額は毎年見直されるため、多少の変動がありますが、自分の収入が増えても減っても、支払う金額は変わりません。
支払い方法も自分で選べます。毎月納付書で払うこともできますし、口座振替やクレジットカード払いも可能です。さらに、まとめて前払いすると割引が受けられる制度もあります。たとえば1年分をまとめて前払いすると、年間で約4,000円ほど安くなります。
ただし、割引額は年度や前納の方法(口座振替・クレジットカードなど)で変わるので、ここでの金額は目安として考えてください。
将来いくらもらえるの?
気になるのは「将来いくらもらえるのか」ですよね。国民年金を40年間(20歳から60歳まで)満額納めた場合、65歳から受け取れる年金額は年間約79万円、月額で約6万6千円です(※2024年度の金額)。
これに対して会社員が加入する厚生年金の場合、国民年金に上乗せされる形で支給されるため、平均的な会社員で月額約15万円程度になります(※厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。この差は決して小さくありません。
- 国民年金のみ(フリーランス)
- 月額約6万6千円(40年間満額納付の場合)。基礎年金のみで、老後の生活には不十分。
- 厚生年金(会社員)
- 月額約15万円(平均的な会社員の場合)。国民年金に厚生年金が上乗せされる。
- 差額は月8万4千円
- 年間で約100万円の差。この差が老後の生活の質を大きく左右します。
年金を増やす3つの方法
国民年金だけでは老後の生活が不安という方のために、年金を増やせる制度が用意されています。それぞれに特徴があるので、自分に合った方法を選びましょう。
AIツールで将来をシミュレーションしてみよう
「自分は将来いくら必要なのか」「今からどれくらい備えればいいのか」を知ることは、漠然とした不安を具体的な行動に変える第一歩です。最近では、AIを活用したライフプランシミュレーションツールが充実してきており、誰でも簡単に将来設計を試算できるようになっています。
ChatGPTでライフプランを相談する
ChatGPTに自分の状況を伝えることで、個別のアドバイスをもらうことができます。
たとえば以下のように質問してみましょう。
「30歳のフリーランスエンジニアです。現在の月収は50万円、年収約600万円です。国民年金と付加年金に加入していますが、老後に向けてiDeCoも始めるべきでしょうか?月にどれくらい積み立てればいいか、シミュレーションしてください。」
このように具体的な情報を伝えると、あなたの状況に合わせた試算とアドバイスが得られます。さらに、「老後の生活費を月25万円と想定した場合、何歳まで働く必要がありますか?」といった追加質問もできます。
一度で完璧な答えが出なくても大丈夫です。条件(生活費・住居費・家族構成・働き方)を少しずつ変えて複数パターンを試すと、「自分にとって現実的なライン」が見えてきます。
専用シミュレーターの活用
金融機関や公的機関が提供する無料のシミュレーターも便利です。
- ねんきんネット 日本年金機構が運営する公式サービス。自分の年金記録を確認でき、将来の受給額を試算できます。
- iDeCoシミュレーター 各金融機関が提供。掛金に応じた節税効果と将来の受取額を試算できます。
- ライフプランシミュレーター 全国銀行協会などが提供。収入・支出・貯蓄のバランスから、将来の資金繰りを確認できます。
これらのツールを組み合わせることで、より現実的な将来設計が可能になります。
AIツールは便利ですが、最終的な判断は自分で行うことが大切です。複数のツールで試算して、結果を比較検討しましょう。
知っておきたい注意点
最後に、社会保険と年金に関する重要な注意点を整理しておきましょう。知らないと損をしたり、将来困ることになる可能性があります。
- 切り替え手続きは退職後14日以内
- 会社を辞めたら、住んでいる市区町村の役所で国民健康保険と国民年金の加入手続きをする必要があります。遅れると医療費が全額自己負担になったり、年金の未納期間ができてしまいます。
- 国民健康保険には扶養の概念がない
- 会社員の健康保険にあった「扶養」という仕組みが国保にはありません。家族も個別に加入が必要で、一人ひとりに保険料がかかります。
- 年金の未納は絶対に避ける
- 保険料を払わないと、将来もらえる年金額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金も受け取れなくなる可能性があります。どうしても払えない場合は、免除・猶予制度を利用しましょう。
- 保険料の減免制度がある
- 前年の所得が少ない、失業したなどの事情がある場合、申請すれば保険料が減額または免除される制度があります。自動的には適用されないので、該当する場合は市区町村の窓口で相談しましょう。
- 任意継続は途中でやめられない
- 任意継続を選んだ場合、基本的に2年間は途中でやめることができません(保険料を滞納した場合は強制的に資格喪失)。国保に切り替えたくなっても途中変更できないので、慎重に選びましょう。
保険料の支払いが難しい、手続きがわからないなど、困ったことがあれば一人で抱え込まずに相談しましょう。市区町村の役所、年金事務所、商工会議所などに相談窓口があります。また、フリーランス向けのコミュニティやSNSで情報交換するのもおすすめです。
まとめ
- 健康保険は3つの選択肢を比較 国民健康保険、任意継続、扶養のメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合わせて選びましょう。
- 年金は上乗せ制度を活用 国民年金だけでは老後の生活が厳しいため、付加年金、国民年金基金、iDeCoなどで備えることが大切です。
- AIツールでシミュレーション ChatGPTや専用シミュレーターを使って、将来必要な金額を具体的に試算してみましょう。
- 手続きは早めに 退職後14日以内に手続きが必要です。減免制度も活用できるので、困ったら相談窓口を利用しましょう。
次回は「収入が不安定なときの考え方」について学びます。フリーランスならではの収入の波にどう対処するか、生活防衛資金の考え方など、実践的な知識を身につけていきましょう。