経費ってそもそも何?
経費とは、事業を行うために必要な支出のことです。会社員の場合は会社が経費を負担してくれますが、フリーランスは自分で支払った経費を記録し、確定申告で申告することで、税金の計算対象となる所得を減らすことができます。
つまり、経費を正しく記録することは、単なる帳簿管理ではなく、適正な税金を納めるための重要な作業なのです。
例えば、年間の収入が300万円あって、経費が100万円かかった場合、税金の計算対象となるのは「300万円 - 100万円 = 200万円」です。経費をきちんと記録することで、実際の利益に見合った税金を払うことができます。
経費管理がもたらす価値
経費を記録し管理することは、確定申告のためだけではありません。自分のビジネスを健全に成長させるための、重要な経営活動の一部です。
経費として認められる基準
経費にできるかどうかの判断で最も重要なのは、「その支出は事業に必要だったか」を説明できるかどうかです。税務署に「なぜこれが経費なのですか?」と聞かれたとき、合理的な説明ができれば問題ありません。
経費として認められるかどうかは、金額の大小ではなく、「事業との関連性」がすべてです。100円のノートでも、仕事で使ったものなら経費になりますし、10万円のパソコンでも、プライベートでしか使わないなら経費にできません。
3つのチェックポイント
経費として計上する前に、以下の3つをチェックしましょう。この3つすべてを満たすものが、安心して経費にできる支出です。
1. 事業との関連性
その支出は、本当に仕事のために必要でしたか?プライベートで使ったものは経費にできません。
重要なのは、「なぜその支出が仕事に必要だったのか」を第三者に説明できるかどうかです。同じ商品でも、職種や状況によって判断が変わることがあります。
判断のポイント:
- Webエンジニアが開発用のノートPCを買う → ○(明らかに仕事に必要)
- Webエンジニアがゲーム機を買う → ×(仕事との関連性が説明しにくい)
- ゲーム開発者がゲーム機を買う → ○(競合調査や研究のため、と説明できる)
このように、同じゲーム機でも、エンジニアの専門分野によって経費になるかどうかが変わります。
2. 証明可能性
その支出を証明する証拠(領収書、レシート、請求書など)がありますか?記憶だけでは経費として認められません。
税務調査では、経費として計上したすべての支出について、証拠となる書類の提示を求められることがあります。「確かに買ったけど、レシートを捨ててしまった」では通用しません。
必要な情報:
- いつ(日付)
- どこで(店名・サービス名)
- 何を(品目・内容)
- いくら(金額)
これらの情報が記載された証拠書類を、必ず保管しておきましょう。
3. 常識的な金額
金額が常識の範囲内ですか?過度に高額な支出は、本当に事業に必要だったのか疑問視されることがあります。
「仕事に必要」だからといって、どんな高額な支出でも経費になるわけではありません。その金額が業務内容に見合っているか、同業者と比較して妥当な範囲かという観点も重要です。
例:
- 開発用のMacBook Pro(30万円程度) → ○(エンジニアとして妥当)
- 自宅用の100万円の高級チェア → △(説明が必要)
高額な支出の場合は、「なぜその金額のものが必要だったのか」を説明できるようにしておきましょう。
フリーランスエンジニアの経費一覧
フリーランスエンジニアとして働く際に、経費として計上できる主な支出をカテゴリ別に整理しました。これらは一例であり、事業内容や働き方によって変わります。
パソコンなど10万円以上の機材は、購入した年に全額を経費にするのではなく、減価償却という方法で数年に分けて経費計上します。例えば、30万円のMacBookを購入した場合、法定耐用年数(PCは4年)に従って、毎年7.5万円ずつ経費として計上します。詳しくは会計ソフトや税理士に相談しましょう。
グレーゾーン:判断に迷う経費
経費になるかどうかの判断が難しいケースもあります。大切なのは、「仕事のために使ったか」を明確に説明できるかどうかです。
クライアントとの打ち合わせで利用したカフェ代。日時・相手・議題をメモしておく。
仕事で使う技術を学ぶための専門書。React、AWS、デザインパターンなど、業務に直結する内容。
クライアントや協力会社との会食費。ビジネス上の関係構築のため。相手の名前と目的を記録。
ChatGPT Plus、Spotify(作業用BGM)など、業務効率向上のためのサービス。
友人とのおしゃべりや、個人的な読書のために利用したカフェ代。仕事との関連性が説明できない。
仕事に関係ない小説や雑誌。エンタメ系の書籍は、仕事との関連性を説明しにくい。
家族や友人との食事代。プライベートな支出は経費にできません。
Netflix、Amazonプライム(娯楽目的)など、個人的な楽しみのためのサービス。
判断に迷ったときの対処法
経費かどうか判断に迷ったときは、以下の方法で対処しましょう。
- メモを残す レシートの裏に「◯◯社との打ち合わせ」「△△の技術調査のため」など、目的を書いておく
- 保守的に判断する 迷ったら経費にしない、という選択も賢明です。無理に経費計上してリスクを負うより、安全側に倒す
- 税理士に相談する 年間数万円で顧問契約できる税理士もいます。専門家の意見を聞くことで安心できます
- 税務署に確認する 所轄の税務署に電話で相談することもできます。匿名でも対応してくれます
家事按分を理解しよう
自宅をオフィスとして使っている場合、家賃や光熱費の一部を経費として計上できます。これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
家事按分の考え方は、「全体のうち、どのくらいを仕事に使っているか」を合理的に説明できる割合で分けるというものです。
按分割合の決め方
按分割合を決める方法は大きく分けて2つあります。
1. 面積で按分する(家賃・固定資産税など)
自宅の総面積のうち、仕事専用スペースが占める割合で計算します。
例: 60㎡のアパートで、8㎡の部屋を事務所として使用
- 按分割合:8㎡ ÷ 60㎡ = 約13%
- 家賃が8万円の場合:8万円 × 13% = 10,400円が経費
2. 時間で按分する(電気代・水道代・通信費など)
1日24時間のうち、仕事で使っている時間の割合で計算します。
例: 1日8時間、週5日働く場合
- 1週間の総時間:24時間 × 7日 = 168時間
- 仕事時間:8時間 × 5日 = 40時間
- 按分割合:40時間 ÷ 168時間 = 約24%
- 電気代が1万円の場合:1万円 × 24% = 2,400円が経費
家事按分の計算ステップ
- 面積按分:自宅の図面を用意し、仕事専用スペースを測定
- 時間按分:1週間の仕事時間を記録し、全体時間との比率を計算
- 根拠を明確に:税務調査で説明できるよう、計算根拠を保管
- 家賃:賃貸契約書で金額を確認
- 電気・ガス・水道:毎月の請求書を保管
- 通信費:インターネット回線、携帯電話の利用明細
- 計算式:支出額 × 按分割合 = 経費
- 会計ソフトに記録:勘定科目は「地代家賃」「水道光熱費」など
- 毎月同じ割合で按分:一貫性を保つことが重要
按分割合は「合理的に説明できる範囲」で設定しましょう。例えば、1Kのアパート全体を事務所として100%経費にするのは難しいです。寝室やキッチンなど、明らかに生活で使う部分があるためです。一般的に、自宅兼事務所の場合は30〜50%程度が妥当とされています。
経費の記録方法とAI活用
現代のフリーランスにとって、AI搭載の会計ソフトは強力な味方です。レシートの読み取りから自動仕訳まで、面倒な作業を大幅に減らしてくれます。
AI会計ソフトでできること
2026年現在、主要な会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)には、以下のようなAI機能が搭載されています。
- レシート自動読み取り(AI-OCR)
- スマホでレシートを撮影するだけで、日付・金額・店名を自動で読み取り、データ化してくれます。手入力の手間がほぼゼロに。
- 自動仕訳提案
- 銀行口座やクレジットカードと連携し、取引内容から勘定科目を自動で提案。使えば使うほど学習して精度が上がります。
- 重複検知
- 同じレシートを二重で登録しようとすると、AIが自動で検知して警告。ミスを未然に防ぎます。
- 確定申告書の自動作成
- 日々の記録データから、確定申告に必要な書類を自動生成。複雑な計算もソフトにお任せ。
経費記録の基本ルール
AIソフトを使う場合も、以下の基本ルールは守りましょう。
- レシート・領収書は必ず保管
- 電子帳簿保存法に対応した方法で、スマホで撮影して保管します。紙の原本も念のため保管しておくと安心。法律上、5年間(青色申告の場合は7年間)の保管義務があります。
- こまめに記録する
- 1ヶ月分まとめて入力するより、週に1回、できれば毎日少しずつ記録する方が楽です。記憶も新鮮なうちに記録できます。
- プライベートと分ける
- 事業用とプライベート用のクレジットカードや銀行口座を分けておくと、記録がシンプルになります。
おすすめの会計ソフト
フリーランスに人気のAI会計ソフトとして、freee会計とマネーフォワード クラウドの2つが代表的です。
freee会計は、初心者でも使いやすい設計が特徴です。質問に答えていくだけで確定申告書が作成でき、専門知識がなくても安心して使えます。特許技術による高精度な自動仕訳で、銀行やクレジットカードと連携すれば、ほとんど自動で記帳が完了します。月額1,480円から利用できます。
マネーフォワード クラウドは、機能が豊富で拡張性が高いのが魅力です。AI-OCRで証憑を自動読み取りし、請求書作成や経費精算も一元管理できます。API連携でさらに自動化を進めたい人に向いています。月額1,408円から利用可能です。
どちらのソフトも無料プランや無料トライアル期間があります。まずは両方試してみて、自分に合った方を選びましょう。使いやすさや画面の見やすさは、人によって好みが分かれます。実際に触ってみて、直感的に操作できる方を選ぶのがおすすめです。
やってはいけない経費処理
経費の記録で絶対にやってはいけないことがあります。これらは税務調査で発覚すると、重いペナルティが課される可能性があります。
NGな行為
- プライベート支出を経費にする
- 家族旅行を「出張」として計上する、趣味のゲーム機を「調査研究費」とするなど、明らかに仕事と関係ない支出を経費にしてはいけません。
- 領収書を偽造する
- 金額を書き換えたり、架空の領収書を作成したりする行為は、犯罪です。
- 証拠なしに計上する
- 記憶だけで「たぶんこのくらい使った」と経費を計上してはいけません。必ず証拠となる書類が必要です。
- 経費の水増し
- 実際の金額より多く計上したり、同じ領収書を複数回計上したりする行為も禁止です。
税務調査で指摘されるとどうなる?
不適切な経費計上が税務調査で発覚すると、以下のようなペナルティがあります。
- 追加で税金を払う 本来払うべきだった税金を、後から支払う必要があります
- 延滞税がかかる 納税が遅れた分、利息のようなものが上乗せされます
- 加算税がかかる 悪質と判断された場合、さらに罰金のような税金が課されます(最大で税額の40%)
- 信用を失う 悪質な脱税として刑事罰の対象になることもあります
「少しくらいなら大丈夫」という考えは危険です。税務調査は過去5年分(悪質な場合は7年分)に遡って調べられます。小さな不正が積み重なると、後で大きなトラブルになります。迷ったら経費にしない、わからないことは専門家に相談する、という誠実な姿勢が、長期的に見て自分を守ることになります。
まとめ
- 判断基準は「事業関連性」 その支出が仕事に必要だったか、説明できることが最重要
- 3つのチェックポイント 事業との関連性、証明可能性、常識的な金額を確認する
- 証拠を必ず残す レシート・領収書は5〜7年間保管する義務がある
- 家事按分は合理的に 自宅兼事務所の場合、面積や時間で按分割合を計算する
- AIソフトを活用する freeeやマネーフォワードなどで記録を自動化し、負担を軽減
- 誠実な記録が基本 迷ったら経費にしない、わからないことは専門家に相談する
次回は、社会保険と国民年金の仕組みについて学びます。税金と同じく、フリーランスとして知っておくべき大切な知識です。