なぜコミュニケーションでトラブルが起きるのか
フリーランスエンジニアのトラブルの大半は、技術的な問題ではなくコミュニケーションの誤解から生まれます。リモートワークが主流の今、テキストベースのやりとりでは特に注意が必要です。
トラブルの4大原因
トラブルが起きやすい4つの場面
経験豊富なフリーランスでも、以下のような場面では特に注意が必要です。これらは「言った・言わない」のトラブルが起きやすい代表的なケースです。
- 仕様確認のタイミング 「これくらいわかるだろう」と思って確認せず、後で大きな修正が発生
- 納期調整の場面 「できる」と言ったものの、実際には厳しく、結果的に遅延してしまう
- 追加作業の依頼時 「これは契約に含まれていない」と思っても、言い出せずに引き受けてしまう
- 問題発生時の報告 「怒られたくない」と思って隠し、後で大問題に発展する
これらの場面で適切なコミュニケーションを取ることが、トラブル予防の鍵になります。
誤解を防ぐ5つのコミュニケーション原則
では、具体的にどうすれば誤解を防げるのでしょうか。以下の5つの原則を意識するだけで、コミュニケーションの質は大きく向上します。
具体例で学ぶ誤解の防ぎ方
言葉だけだとイメージしにくいかもしれないので、実際の例を見てみましょう。
クライアント:「このページ、もっといい感じにしてもらえますか?」
あなた:「わかりました。できるだけ早く対応します。」 - 「いい感じ」が何を指すのか不明確(デザイン?速度?使いやすさ?)
- 「できるだけ早く」がいつなのか曖昧(今日?明日?来週?)
- 具体的な作業内容が共有されていない
クライアント:「このページ、もっといい感じにしてもらえますか?」
あなた:「承知しました。具体的にはどの点を改善すればよろしいでしょうか?
例えば、デザインの見栄え、読み込み速度、操作のしやすさなど、
優先したいポイントを教えていただけますか?」
クライアント:「スマホで見たときに文字が小さくて読みにくいんです。」
あなた:「承知しました。スマホでの可読性を改善ですね。
明日17時までに修正し、完了報告をお送りします。
修正内容は『フォントサイズを大きく』『行間を広く』で進めますが、
この方向性で問題ないでしょうか?」 - 「いい感じ」の具体的な内容を確認している
- 納期を明確に提示している(明日17時)
- 修正内容を具体的に示して、認識を合わせている
- 最後に確認を取り、誤解を防いでいる
このように、曖昧な表現を避け、具体的に確認することで、トラブルの多くは未然に防げます。
AIツールでトラブルを予防する
コミュニケーションの質を上げることは大切ですが、毎回完璧に対応するのは現実的ではありません。そこで活躍するのがAIツールです。エンジニアの日常業務に組み込むことで、自然とトラブル予防ができます。
コミュニケーションを助けるAIツール4選
フリーランスエンジニアが実際に現場で使っているツールを、用途別に紹介します。
エンジニアの日常で実践するトラブル予防術
では、実際の開発現場でどのようにトラブルを防げばよいのでしょうか。エンジニアとしての日常業務に即した実践例を見てみましょう。
実際のコード例:コミットメッセージとPR説明
言葉だけだとイメージしにくいので、実際の例を見てみましょう。
# コミットメッセージ
git commit -m "fix"
# PR説明
Title: バグ修正
Description: 直しました - 何を修正したのか不明
- なぜその実装にしたのか分からない
- レビュアーが意図を理解できない
# コミットメッセージ
git commit -m "fix: ユーザー一覧ページの無限スクロールエラーを修正
問題:データ取得中に再度スクロールすると、重複データが表示される
原因:ローディング中のフラグ管理が不十分
対応:fetchData実行中はスクロールイベントを無効化" # PR説明
## 概要
ユーザー一覧ページで発生していた、無限スクロール時の重複データ表示を修正
## 問題
- データ取得中にさらにスクロールすると、同じデータが複数回表示される
- ユーザー体験が著しく低下していた
## 原因
- `isLoading`フラグの更新タイミングが不適切
- スクロールイベントの制御が不十分
## 対応内容
- データ取得開始時に`isLoading=true`に設定
- `isLoading=true`の間はスクロールイベントを無視
- データ取得完了後に`isLoading=false`に戻す
## テスト
- 高速スクロール時の動作確認 ✅
- ネットワーク遅延時の動作確認 ✅
- モバイル端末での動作確認 ✅
## スクリーンショット
[修正前後の動作比較GIF] - 問題・原因・対応が明確に記載されている
- レビュアーが背景を理解しやすい
- テスト内容が具体的で信頼性が高い
- 視覚的な確認資料(スクリーンショット)がある
トラブルが起きてしまったときの対処法
どんなに気をつけていても、トラブルは起こり得ます。大切なのは、起きてしまったときにどう対応するかです。
トラブル対応の5つのステップ
- 感情を切り離し、ログを確認
- Slackの履歴、Gitのコミット、議事録など、客観的な記録を時系列で整理。「誰が悪い」ではなく「何が問題か」を分析
- クライアントの期待値を把握
- 相手は何を期待していたか、どこで認識がズレたかを確認。技術者視点だけでなく、ビジネス視点でも考える
- 複数の解決策を提示
- 「A案:即日対応(追加工数あり)」「B案:来週対応(追加工数なし)」のように、選択肢とトレードオフを明示
- 謝罪と再発防止策をセット
- 非がある場合は素直に謝罪。その上で「今後は仕様確認時に〇〇を追加します」と具体的な改善策を提示
- 合意内容をテキスト化
- 口頭だけで終わらせず、メールやSlackで合意内容を文字に残す。エージェント経由の場合は必ず共有
AIが助けてくれること、自分がやるべきこと
トラブル対応でもAIは役立ちますが、責任を取るのは自分です。線引きを明確にしておきましょう。
AIが助けてくれること
- 状況の整理と原因分析(「何が問題か」を言語化)
- 解決策の選択肢を複数提案
- 謝罪文や報告書の下書き作成
- 感情的な表現を冷静なトーンに調整
自分がやるべきこと
- 事実の正確性を確認(AIの分析が正しいか判断)
- 最終的な判断と責任(どの解決策を選ぶか決める)
- クライアントへの誠実な対応(AIの文章をそのまま送らない)
- 再発防止の実行(改善策を実際に行動に移す)
エージェント経由の案件でのトラブル対処
エージェントを介して仕事をしている場合は、トラブル対応の方法が少し異なります。
- まずエージェントに報告する
- トラブルが起きたら、クライアントに直接連絡する前に、エージェントに状況を共有
- 仲介を依頼する
- エージェントが間に入って、冷静に話をまとめてくれる。感情的なやりとりを避けられる
- 直接やりとりは慎重に
- 言った・言わないのトラブルを防ぐため、重要なやりとりはメールなど記録が残る形で
- 契約内容を確認
- 「これは契約範囲内か」判断に迷ったら、エージェントに相談
エージェントは、あなたとクライアントの間に入ってくれる心強い存在です。遠慮せず相談しましょう。
まとめ
- 曖昧な表現を避ける 「なるべく早く」ではなく「〇月〇日〇時まで」と具体的に
- 確認・復唱・共有で認識を合わせる 議事録を共有し、「この理解で合っていますか?」と確認
- AIツールで議事録・要約・翻訳を効率化 Otter.ai、ChatGPT、DeepL等を活用
- 問題は早めに相談、対策案とセットで 隠さず報告。「問題+解決策」で提示
- トラブル時は誠実な対応と改善策の提示 謝罪だけでなく、「今後どうするか」を示す
コミュニケーションの質を上げることが、フリーランスとして長く活躍するための基盤になります。次の第5章では、お金・税金・生活の話を学んでいきます。