業務委託とは?雇用契約との違い
業務委託とは、「特定の業務を外部の個人や企業に委託(=代わりに任せる)する契約」のことです。会社員として働くのとは、根本的に違う仕組みになっています。
会社員は会社に雇われているので、法律でしっかり守られています。社会保険に入れたり、有給休暇がもらえたりするのは、この法律のおかげです。でも、業務委託は「仕事を頼む人」と「仕事を受ける人」が対等な立場で契約するため、会社員のような法律の保護はありません。
- 労働基準法で保護
- 月給制・固定給
- 社会保険完備
- 有給休暇あり
- 労働時間に上限あり
- 対等な事業者間の契約
- 報酬制・単価制
- 自分で社会保険加入
- 有給休暇なし
- 労働時間の制限なし
業務委託は契約形態であり、働き方ではありません。
フリーランスとは、雇用されずに自分で仕事を請け負う働き方のことを指します。業務委託契約を結ぶことでフリーランスとして働くことが多いですが、以下のような例外もあります。
- 会社員でも業務委託 会社に所属しながら、一部の業務を業務委託で受けるケースもある
- フリーランスでも雇用契約 短期雇用として働くフリーランスもいる
- 個人事業主との違い 個人事業主は税法上の区分で、契約形態とは別の概念
このレッスンでは、フリーランスが主に使う業務委託契約について学びます。
フリーランスエンジニアが使う契約形態
業務委託契約には、大きく分けて3つの形態がありますが、フリーランスエンジニアが主に結ぶ契約は「準委任契約」と「請負契約」の2つです。 委任契約は弁護士や税理士のような法律行為を扱う専門職が使う契約形態なので、ITエンジニアの実務ではほとんど使われません。
まずは、エンジニアにとって重要な準委任契約と請負契約の違いをしっかり理解しましょう。
働いた時間に対して支払い
- 月〇〇時間稼働
- 常駐・リモート両方
- 成果物の完成責任なし
- 月額固定報酬
納品物の完成に対して支払い
- 「〇〇を作る」が契約
- 納期厳守
- 成果物の完成責任あり
- プロジェクト単位の報酬
準委任契約:時間ベースの働き方
準委任契約は、「一定の時間働くこと」に対して報酬が支払われる契約形態です。フリーランスエンジニアの案件で最も多く使われる契約です。
「月160時間稼働」「週3日常駐」といった形で、時間や日数をベースに契約します。成果物が完成しなくても、約束した時間働けば報酬が支払われます。
準委任契約の特徴
準委任契約は、時間に対して報酬が支払われるため、会社員に近い働き方になります。ただし、雇用契約ではないため、労働基準法の保護は受けられません。
- 時間ベースの報酬 月〇〇時間、または時給〇〇円で契約
- 成果物の完成責任なし 業務に従事することが目的で、完成は問われない
- 月額固定報酬が多い 月額60万円など、安定した収入を得やすい
- 常駐・リモート両方あり 働く場所は案件により異なる
- クライアントの指揮命令 業務の進め方について指示を受けることが多い
準委任契約の最大のメリットは、収入の安定性です。働いた時間に対して報酬が保証されるため、生活設計が立てやすくなります。
- 安定した収入 月額固定報酬のため、毎月の収入が予測しやすい
- リスクが低い 成果物が完成しなくても報酬は支払われる
- 時間の調整がしやすい 週3日勤務や月120時間など、働く時間を選べる案件が多い
- 長期契約が多い 3ヶ月〜1年の契約期間で、安心して働ける
- チームの一員として プロジェクトチームに参加し、連携して働ける
一方で、時間の制約や単価交渉の難しさといったデメリットもあります。
- 時間の拘束 決められた時間は働く必要がある
- 単価交渉が難しい 時間単位の報酬のため、大幅な増額が難しい
- 複数案件の掛け持ちが難しい 時間的制約があるため、他の仕事と並行しにくい
- 成果を評価されにくい 時間ベースなので、高い成果を出しても報酬に反映されにくい
準委任契約の魅力は、フルタイムだけでなく、週2〜3日の案件もある点です。
- 会社員との両立 週2日案件なら、平日は会社員として働きながら週末フリーランスとして副業できる
- 安定収入の確保 週3日でも比較的十分な収入(月30〜50万円)があるため、リスクを抑えながら個人サービス開発など新しい挑戦ができる
- 段階的な独立 まずは副業から始めて、徐々に稼働日数を増やすことで無理なく独立できる
このように、準委任契約は「完全独立」か「会社員」かの二択ではなく、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を選べるのが大きな魅力です。
請負契約:成果物ベースの働き方
請負契約は、「特定の成果物を完成させること」に対して報酬が支払われる契約形態です。「Webサイトを作る」「機能を実装する」といった明確な成果物が契約の対象になります。
いつ、どこで、どのように作業するかは完全に自由ですが、納期までに約束した成果物を納品する責任があります。
請負契約は、成果物の完成が最優先される契約です。プロセスではなく、結果が全てです。
- 成果物ベースの報酬 「〇〇を作る」という明確な成果物に対して支払い
- 完成責任あり 約束した成果物を納品する義務がある
- 納期厳守 期限までに完成させなければならない
- 作業プロセスは自由 いつ、どこで、どう作業するかは自分で決められる
- 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任) 納品後に不具合が見つかった場合、修正する責任がある
請負契約の魅力は、働き方の自由度の高さと、効率化による収入アップの可能性です。
- 完全な裁量 作業時間や場所を自由に決められる
- 効率化で収入アップ 短時間で完成させれば、時給換算で高収入になる
- 複数案件の並行 時間の使い方を自分で決められるため、掛け持ちしやすい
- スキルが直結 実力があれば高単価案件を受注できる
自由な反面、リスクも大きいのが請負契約の特徴です。
- 完成しないと報酬なし 途中で挫折すると、報酬は支払われない
- 予想以上の工数リスク 見積もりが甘いと、時給換算で低収入になる
- 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任) 納品後の不具合対応も無償で行う必要がある
- 収入が不安定 プロジェクトが終わると次を探す必要がある
請負契約で成功するためには、作業時間を正確に見積もる力が不可欠です。
- 経験が必要 似た案件を何度も経験することで、作業時間の予測精度が上がる
- 見積もりミスのリスク 想定より時間がかかると、時給換算で低収入になる
- バッファの確保 予期せぬトラブルに備え、見積もりに余裕を持たせる必要がある
- 段階的な挑戦 まずは小規模な案件で経験を積み、徐々に大きな案件に挑戦する
初心者がいきなり請負契約で大きな案件を受けると、見積もりが甘くて赤字になるケースも少なくありません。準委任契約で実務経験を積みながら、自分の作業スピードを把握することが大切です。
準委任契約と請負契約の比較
2つの契約形態を比較して、それぞれの違いを整理しましょう。
自営(個人事業主)について
「自営」や「個人事業主」という言葉もよく聞きますが、これは契約形態ではなく、税法上の区分です。業務委託契約とは別の概念です。
個人事業主とは
個人事業主とは、税務署に「開業届」を提出して事業を行う個人のことです。フリーランスとして継続的に収入を得る場合、個人事業主として開業届を出すのが一般的です。
- 税法上の区分 事業所得として確定申告を行う
- 開業届の提出 税務署に開業届を出すことで個人事業主になる
- 青色申告が可能 青色申告特別控除で節税できる
- 屋号の使用 個人名以外の事業名を使える
個人事業主 ≠ フリーランス
個人事業主とフリーランスは、しばしば混同されますが、別の概念です。
- フリーランス 働き方のスタイル(会社に所属せず独立して働く)
- 個人事業主 税法上の区分(事業所得として申告する)
- 重なる部分 多くのフリーランスは個人事業主として開業届を出している
- 例外もある 副業フリーランスは、個人事業主にならず雑所得で申告するケースもある
例:フリーランスエンジニア、フリーランスデザイナー
例:フリーランス、カフェオーナー、農家
例:準委任契約、請負契約
契約形態を選ぶポイント
どの契約形態が良いかは、自分のスキルレベル、経験、ライフスタイルによって異なります。
初心者におすすめ:準委任契約
フリーランスとして独立したばかりの段階では、準委任契約から始めるのがおすすめです。
- 安定した収入 月額固定報酬で生活が安定する
- 学習機会 チームの一員として働くことで、実務スキルを学べる
- リスクが低い 成果物の完成責任がないため、精神的負担が少ない
- 人脈構築 クライアント先で人脈を作り、次の仕事につなげられる
経験者向け:請負契約
スキルと自信がついてきたら、請負契約にもチャレンジしてみましょう。
- 高単価 短時間で完成させられれば、時給換算で高収入になる
- 自由な働き方 時間と場所を自分で決められる
- 複数案件 効率的に作業して、複数の案件を並行できる
- スキルの証明 完成させた成果物が、実力の証明になる
ハイブリッド型:両方を組み合わせる
準委任契約と請負契約を組み合わせて働く方法もあります。例えば、準委任契約で安定収入を確保しつつ、請負契約で追加収入を得るスタイルです。
- 安定 + 自由 準委任で安定収入を得ながら、請負で追加収入
- リスク分散 複数の収入源を持つことで、リスクを軽減
- スキル向上 異なる契約形態で、幅広い経験を積める
まとめ
- 業務委託とは 特定の業務を委託する契約で、雇用契約とは異なる
- 業務委託≠フリーランス 契約形態と働き方は別の概念
- 準委任契約 時間ベースの報酬で、安定した収入が得られる
- 請負契約 成果物ベースの報酬で、自由度が高いがリスクもある
- 個人事業主 税法上の区分で、開業届を出すことで認められる
- 初心者は準委任から 安定収入とスキル習得を優先しよう
- 契約書の確認 契約内容をしっかり理解し、不明点は質問する
次のレッスンでは、フリーランスエンジニアの具体的な働き方のスタイル(常駐・リモート・個人開発・ハイブリッド)について学びます。